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東京西徳洲会病院
小児科難病センター顧問 神経・発達部
二瓶健次氏 
DR. KENJI NIHEI



おもちゃは子どもの発達段階を
映す鏡であり、医療の現場でも貢献


発達段階にあったおもちゃを選んで
与えることが大切


――二瓶先生は国立小児病院(現国立成育医療センター)の神経科医長を務められていた時に「おもちゃライブラリー」を日本で初めて病院内に導入され、現在の東京西徳洲会病院にもおもちゃライブラリーを導入されました。病院におもちゃライブラリーが必要だと思う最大の理由は何でしょうか?
 

 我々は子どもの中でも特に発達の遅れている子どもや、神経に障害のある子どもを診ることが多く、そういった子ども達は上手くおもちゃで遊べないことが多く、お母さんもどういう風におもちゃを与えたらいいのかが分からないことがあるんですね。

 健常な子どもは何でもおもちゃにして遊べるし、それなりに楽しむことができます。でも発達に問題のある子ども達には、それぞれの発達段階に合わせたおもちゃを選んで与えてあげることが必要です。

 発達に合ったおもちゃを与えられることで、おもちゃで遊ぶことの楽しさが分かり、徐々におもちゃに興味を持ち始め、それがきっかけになって次のおもちゃでも遊べるようになる。あるいは1つのおもちゃで色々な遊びができるようになる。そういった状況に上手く導いてあげることがおもちゃライブラリーの役割であり、それが病院におもちゃライブラリーがある意味だと思っています。

 また、お母さん達もたくさんあるおもちゃの中から自分の子どもにはどれが良いのか分からなかったりします。買ったおもちゃにすぐに興味を示さずにそっぽ向かれてしまったらもったいないですよね。だからおもちゃライブラリーに色々な種類のおもちゃを用意して、実際に遊んでどんなおもちゃが好きなのか、どんなおもちゃでよく遊べるのかが分かれば、家でもそうしたおもちゃを買い与えて遊ばせることができるし、場合によってはライブラリーがおもちゃを貸し出すこともできます。

 最近は病院におもちゃライブラリーを設置するケースが増えているようですが、病院の幹部というのはえてして外来患者の待ち時間の暇つぶしみたいな、要するにデパートにある子どもの遊び場と同じレベルで捉えがちで、実際にそうした位置付けになってしまっているおもちゃライブラリーも多いと思います。

 しかしそうではなく、病院の中にあるからこそおもちゃライブラリーに医学を取り込む必要があるし、そのためには小児神経の医師だけでなく、子ども達の発達診断ができる発達心理の専門家がいることが必須条件ではないかと考えています。

――おもちゃで楽しく遊べるということが発達の健常化を示すバロメーターにもなるということですか?

 逆に我々も子どもがおもちゃで遊んでいる様子を見ると、その子どもが今どんな発達段階にあるのかが分かると同時に、発達の遅れや神経学的な問題点を知ることができます。

 ですから私はいつも外来にもおもちゃを1つ置いておき、診察に来た子どもがそのおもちゃでどういった遊び方をするのかを見て、この部分の発達が未熟だといったことを判断しています。おもちゃというのは医療においてもすごく面白い存在なんですね。

 もちろん、発達の遅れというのは子ども達と直接話をすることでも分かりますが、そこにおもちゃという媒体があって、子どもとおもちゃとの関わり方を見ることで分かることもあるんです。

 それから子どもに指導をする時もおもちゃを媒体にして指導をすると、子どもはおもちゃに興味を持ちますから、直接指導するよりもうまく運ぶこともあります。また、当小児科は2年前にできたばかりで順次拡大している段階のためまだ入院設備が整っていませんが、入院してベッドの中で生活をしなければならない子ども達にとっては特におもちゃは欠かせない存在になると思います。

―― 子どもがおもちゃと関わる様子を長年見てきて、どういったおもちゃが発達に良い影響を及ぼすと感じられますか?

 最初は非常に単純だった遊びしかできなかったものが、偶然あるいは少しのアドバイスで色々な遊び方を自分で発見できると子どもはそれが面白いわけですね。私は良いおもちゃというのはそういうことだと思うんです。つまり、1つのおもちゃから色々な遊びが出てくるもの、発達に応じた遊びや楽しみ方ができるもの。

 反対に1つの限定された遊びしかできないおもちゃもありますね。そういったおもちゃは発達段階の途中でおもちゃを次々と変えていかなくてはいけない。そうではなくおもちゃは変わらずに子どもが変わっていくというか、おもちゃが子どもに合わせて変化していくような、そういったおもちゃが良いおもちゃではないかと思います。それは機能を詰め込んだおもちゃとも違います。

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