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 お茶の水女子大学
 理事・副学長 学術博士
内田伸子氏 
 MS. NOBUKO UCHIDA


発達段階において
10ヵ月と5歳は大切な節目です


――それぞれの発達段階で必要な遊び、楽しめるおもちゃがあるわけですね。

 
そうです。特に10ヵ月と5歳は大切な節目です。イメージが誕生して、モノの同一性ができる10ヵ月を第1次認知革命とすると、プラン能力が出てきて、因果推論つまり可逆性の操作が使えて、メタ認知ができる5歳後半を第2次認知革命の時期と位置づけることができます。さらに次の段階としては、具体物がなくても命題だけで操作ができるという大人の抽象的な思考段階に入る9歳を第3次認知革命としています。

――今のお母さんは早め、早めに知育玩具などを与えたがる傾向があります。

 
それは良くないですね。待つ、見極める、急がない、急がせない――これが育児の鉄則です。発達は子ども主導でするものですから、無理に教え込んでも知識は身に付きません。例えば、5歳後半より前に文字を教えても無駄です。自然に文字に親しんで、遊びとして習得している場合は別として、一般的には5歳後半にならないと無理です。

 なぜかというと、音韻的な意識が整うのは5歳後半からで、音韻意識というのは音節分解と音韻抽出から成っていて、ウサギという言葉がウ・サ・ギの3音節から成っていることを知ることを音節分解と言い、ウサギの最初の音節がウ、最後の音節がギ、真ん中はサというように音韻・音節を分離して抽出する機能のことを音韻抽出と言います。この2つの特性を持った音韻意識が育たないと、文字はいくら教えても身に付かないんです。


――ごっこ遊びは子どもにとってどのような意味があるとお考えですか?

 
テレビで見た光景とか、母親の仕草とか、それらを追体験して、そのことの本質を知るための営みですから、非常に大切な遊びだと思います。おもちゃの中のままごと遊びやなりきり遊びであれば、それをリアルにするのか、もう少し抽象化した形にするのかといった違いはあるでしょうが、抽象化したものであっても自分のイメージで書き込める段階だと子どもはすごく楽しめるわけです。

――おもちゃを開発する側も、子ども達の成長過程や生活をしっかりと知ることが大前提になりますね。

 
おもちゃを仕事にするということは、子どものことを知って、そして子どもが好きでなければできないものだと思います。それと、子どものことを知るのと同時に、子どもの文化を作るという気概も持たなくてはいけない。現場で働く人には特に、子ども達のためになるものを作っていこうという気持ちと、子ども達の文化を作るのに自分も参画しているんだという意識を持って欲しいですね。おもちゃは本当に大事な文化産業ですから。そして子どもは社会の宝です。将来の文化の創造の担い手となる子ども達の心を育むことに、いくら私達大人がコストをかけたとしても、子ども達の充分な発達によって得られる文化・社会の益はそのコストを補って余りあるものであることは間違いありません。


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